■1929年
1929年はともすれば金融界ではなんとも悪名高い年であるが、
世界中のアングラーにとっては大切な年になったことであろう。
株式市場の暴落が続くまさにその年、ロバート・ウインザーとルー・ストナーはサンフランシスコの
Western Fishing Rod Companyという会社を買い取り、
“The Winther-Stoner Manufacturing Company”という名でフライフィッシングロッドの生産を始める。
彼らが生み出すバンブーロッドはその性能と素晴らしい品質により、すぐに名声を得ることとなった。
そのロッドは2人のラストネームから「ウインストン」と呼ばれるようになったのである。
■1930年代
1933年、ロバート・ウインザーはゴールデンゲート・アングリングクラブのメンバーで熟達した釣り人である従業員のレッド・ロスコットに社の所有権を売却した。
翌年、ルー・ストナーは当時人気の高かったトーナメントキャスティング用に、
ロッドの重量を減らしつつパフォーマンスが格段に向上する中空技術
“ホロー・フルーテッド構造”を世界で初めて開発し、特許を獲得。
1938年、この技術を採用したウインストンロッドで世界記録を樹立。
その後数年、ホロー・フルーテッドのロッドが当時のほとんどのトーナメンターに
使用されるようになり、ディスタンスのワールドレコードを次々と破ることになった。
■1940年代
1945年、ダグ・メリックがウインストンに入社。
その8年後である1953年にレッド・ロスコットから社の所有権を買収。
1957年にルー・ストナーが逝去したことにより、ダグ・メリックは単独オーナーとなった。
彼は当時の新素材であるファイバーグラスを使用したロッドの生産を始める。
この時代のウインストンのトーナメントロッドは、
かのジョン・タランティーノ率いるゴールデンゲート・アングラーズクラブにより
数々のワールドレコードをうちたて続けられた。
■1960年代
素晴らしいロッドビルディングの伝統は1960年代にも継承され、1967年、有名アングラーであり、
パリのインターナショナルファリオクラブの会長であるホテル経営者シャルル・リッツから、
ダグ・メリックの卓越したバンブーロッドの製作技術と知識に対しメダルが授与された。
彼の時代のウィンストンロッドは現在、世界中のコレクターたちの垂涎の的となっている。
■1970年代
1970年代はウインストンにとって変化の期間であった。
1973年にトム・モーガンが社を買収し、さらに1年後、グレン・ブランケットが
彼のパートナーになった。
1975年、ウインストンはグラファイトロッドの生産を開始。
翌1976年に、ビーバーヘッド、ビッグホール、ジェファーソンリバーという
ワールドクラスの釣り場に近いモンタナ・ツインブリッジズに本社を移すことが決定した。
1980年代には、それまで使用していたレギュラーグラファイトに加え、
IM6グラファイトを導入し始めた。
1987年、レギュラーグラファイトと、新しいIM6グラファイトを組み合わせた
3ピースロッド“IM6”を開発。創業当時から引き継がれている"Winston Action"を妥協なく、
流れるようなバランスのとれたアクションで実現。一躍ベストセラーとなる。
このロッドはその後も“WT(Winston Traditional)”と名を変え長きに渡り主要モデルとなる。
■1990年代
1991年、デイビッド・オンダージェはトム・モーガンとグレン・ブラケットより買い取った。
1994年には自社でグラファイトのブランクを巻き始め、翌1995年、ツインブリッジズのより
大規模な施設に移転し、設備の近代化を図り量産体制を確立。
バンブーロッド部門以外の機能をこの施設に移転し、市場ニーズに答えるべく2ピースロッドと
遜色のないマルチピースロッドの開発に着手。
そして、LT5やジョアンウルフ・フェイバリットなどのグラファイトロッドや、
BL5やXTRなどのボロンコンポジットロッドという革新的なロッドをリリースした。
同時期に当時のバンブーロッド・マスタービルダーであった
グレン・ブラケットは四角ロッドをデビューさせた。
■・・・そして現代
2000年代に入ると、軽量で強力かつしなやかなロッドを生み出す独自の技術“Boron2テクノロジー”を開発。
この技術を採用したBoron2x、Boron2t、Boron2MxのBoron2シリーズは、最新技術を使用した現代的なロッドを開発する。
2011年には、さらに革新的なロッドである“Boron3シリーズ”を開発する。
最新技術を用いながらも、バンブーロッドから始まるウインストンの長い歴史から生まれた“ウインストンアクション”と呼ばれる、
しなやかで心地よいWinstonアクションを継承させる姿は、まさに“伝統と革新”という言葉が相応しいロッドである。
これから先も、良き伝統を継承しながらも常に新しいことに挑戦しつづけ、世界中のアングラーに革新的な
ウィンストンアクションロッドをご紹介することだろう。